
鵺
種:妖怪、化生、怪異
性別:謎
身長:自由
体重:自由
誕生日:996年9月6日
好物:人の笑い声
苦手:人の泣き声
趣味:歌、おしゃべり、他人のやってる事の真似事
ある月の隠れた暗き夜のこと、黒雲から一粒の影が落ちる。
地に落ちた影はこう呟いた。
なにもない…、と
目もなく口もなく形すらなく、ただあるのは自我と底知れぬ“ある欲”だけ。
影は、欲の欲するままに触れたものを吞み続けた。土を呑めば形を成し、草木を呑めば生を息吹き、獣を呑めば五感を醒まし、人を呑めば、、、
これは、後に鵺(ぬえ)と呼ばれ恐れられる、人にも、そして己にすらも“得体の知れない化け物”の物語。
ここは、いまだ神と人と怪異の交わる極東の島国【倭(やまと)】
この国一の都である鏡花(きょうか)より遥か南に位置する霞峠(かすみとうげ)には、ある怪異の噂があった。
霞峠に一つの怪異あり。頭は猿、四肢は虎、蛇の尾を持ち、黒き雲と共に峠を越えようとする人を食らう
噂は瞬く間に鏡花まで伝わり、倭の人々を恐怖させた。隊を編成し討伐に向かうべきと勇み上がる武士も後を絶たず、名を上げようと霞峠に赴く者もいた。
一方“影”は、ただひたすらに貪っていた。最近は全身をきらめかせた硬い革に身を包み、これまた綺麗に輝く木の枝を持った人の雄が峠に現れる。そいつらを呑めば革の名前が鎧、木の枝が刀と名のつくものだと分かり興味津々。退屈せぬ毎日を送っていた。
そんな生活を満喫していた“影”を他所に、人を喰らう怪異を滅するためにとある一団が霞峠を訪れた。
曙(あけぼの)「おいおい、せっかく綺麗なおべべ着てここまで来てやったのに噂の妖怪ってのは全然出てきやしねぇじゃねえか」
兆(きざし)「曙様、油断なされませるな。ここは霞峠、いつ件の妖怪が出てきてもおかしくありませぬ。」
曙「わかっている!!」
曙が声を荒らげながら歩き、その後ろに六人の男がついていく。皆一様にひと目でわかる高級な武具を身にまとって。
日も暮れ、月明かりが照らし始めた頃、生い茂る草木をかき分け歩みを進めると、“それ”はいた。
その体は2丈(6m程度)は越えようか、いや、立てばもっと大きいだろう。異形の獣がそこにいた。背を向けているため顔は見えぬ。ただ四肢は虎、蛇の尾を持ち、獅子のたてがみのような立派な毛並みが見えた。
曙「見つけたぞ!!霞峠の妖怪め!!我こそは倭は鏡花を治めし花王(かおう)が嫡子、曙である!!
いざ、尋常にぃぃぃい!!」
巨躯の化け物を前にして物怖じもせず、蛮勇が如く駆け出す曙。
兆「曙様ぁ!!お待ちください!!!」
兆の言葉ももう遅く、曙の手に持った刀が化け物へと振り下ろされる。
ガギンッッ
まるで岩に鉄をうちつけたかのような、鈍い音が響いた。
曙「えっ、、は!?」
およそ名刀であろう曙の持つ刀の刃は無惨にも潰れている。それにもかかわらず、化け物は気にもかけずに背を向けたままだった。
曙の一太刀を合図に兆を除く五人の男たちも攻撃を仕掛ける。しかしそれでも化け物は背を向け、気にもかけない、と思った次の瞬間、五人の男達の姿が消える。
否、男達の足を残して、、、。
そして、化け物の背中もなかった。男たちの足だけが残ったその場所に、化け物は立っていた。
曙と兆は震え上がる。顔は猿、いや猿のような可愛いものではない。狒々というべきだろうか、血のように濃く、しかし鮮やかな紅が如く赤い面に、琥珀のように輝く眼。しかしその瞳孔は蛇のように冷ややかで、口は裂けたように大きく、牙はそこいらの獰猛な獣が子猫に見えるほどに長く、尖っていた。
化け物の面を見て、己が顔を真っ青に染め、恐れを露わにする曙を他所に、兆は違和感を感じる。
この化け物からは、殺気を感じない。
続く